>  >  > 伝説フェス『BEATCHILD』とロックの時代

豪雨の中でロックの時代が始まろうとしていた 1987年の伝説フェス『BEATCHILD』が映画化

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ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987
小野島大
映画
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佐野元春

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上:観客の様子/中央:渡辺美里/下:会場の様子(クリックで拡大)

 すさまじい映画である。「フェスバブル」と言われるほどさまざまなフェスティバルが全国に乱立し、運営のノウハウや観客の経験値も十分に行き渡り、インフラも整備され、隅々まできっちりと管理された昨今では考えられないほど、ずさんで、不用意で、未熟で、それでも膨大な熱量と、誰にも止められない勢いと、時代が音をたてて変わろうとしている、震えるような予感だけがある。そんな伝説的なイベントを記録したのが『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』だ。

 1987年8月22日から23日にかけて熊本県阿蘇山のふもとでおこなわれた、オールナイトの野外ロック・フェスの嚆矢とも言えるイベント『BEATCHILD』。ブルーハーツ、レッド・ウォリアーズ、BOØWY、ハウンド・ドッグ、ストリート・スライダーズ、尾崎豊、渡辺美里、佐野元春、岡村靖幸、白井貴子と、当時のメジャー・ロックの一線級が勢ぞろいしたラインナップ、72000人という観客の多さもさることながら、このイベントを伝説としたのが、イベントの開始前からほとんど絶え間なく降り続けた土砂降りの豪雨、いや「爆雨」である。文字通りの泥沼と化した会場、雨を避けるスペースもなく、今のフェス客のような雨具の備えさえもない。ただの野外コンサートのつもりで気軽に来てみれば、そこは爆雨と寒さ、水浸しになった会場という地獄が待っていたわけだ。夏台風の襲来で2日目が中止になった第1回フジロックを思い出す人も多いだろうが、当時はインターネットによる情報共有もなかったから、現場の混乱は比較にならないほど大きかったはず。なにより驚かされるのが、ステージに雨を避けるための屋根もないという事実だ。観客も、アーティストも、叩きつける爆雨になすすべもなく、ずぶ濡れになりながら12時間という長丁場を走り抜ける。今にしてみれば中止になってもおかしくない、というか当然中止にすべき状況なのに、最後までやりきったからこそ伝説になったわけだが、深刻な事故や死者が出ても不思議でない極限状況で、手を抜かずに全力でプレイしたアーティストにも、イベントを支えた裏方にも、最後まで耐えた観客にも、本当に頭がさがる。

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