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石井恵梨子が「音楽界のコトバ」を考察  第1回:若手バンドの名付け方

忘れらんねえよ、赤い疑惑、森は生きている…最近のバンドはなぜ文章みたいな名前をつける?

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オルタナティブ
バンド名
パンク
ロック
分析
石井恵梨子
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 忘れらんねえよ。どついたるねん。俺はこんなもんじゃない。

 まるで往生際の悪い捨て台詞だが、これらは音楽ファンなら分かる通り、すべて正式なバンド名。ヘンテコな名前特集を組むのであればシリーズは永遠に続くと思われ、探せば探すほどとんでもないセンスの輩に出会えるだろう。

 特に多いのはアンダーグラウンドのパンク/オルタナ界隈。「ばちかぶり」や「あぶらだこ」、「ハナタラシ」など、少し過去を遡るだけでもお宝がザクザクである。いまや世界のトップバンドである「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」だって出自はパンク。知名度も人気も何もない結成前夜、せめてバンド名のインパクトで勝つ! という気概は皆同じだったのだろう。スパイス・ボーイズとかじゃなくて良かったなぁ。

 万人にウケる親しみやすさなんぞ知らん、誰よりも強烈なインパクトを打ち出してやろうとする精神は、もちろん音楽とも比例するもの。そう思っていたが、最近の流れはちょっと違ってきているようだ。

 赤い公園、赤い疑惑、0.8秒と衝撃。世界の終わり。それでも世界が続くなら、森は生きている。さよなら、また今度ね。

 なにかこう、不穏なサインから急展開で人類滅亡の危機、しかし勇敢に戦うヒーローたちがいて、互いの愛を確認しつつもラストは別々の道を歩む……というハリウッド映画のストーリーが浮かんでくるが、当然これらもすべてバンド名(世界の終わりは正式にはSEKAI NO OWARIと表記)。単に奇抜というよりは、散文的なセンスをあえて打ち出した名前ばかりである。若い彼らは殊更パンク/オルタナ出身というわけではなく、むしろ健全なメジャー指向、実際に優れたポップセンスにも恵まれている。これはどういう流行の傾向なのだろう。

 90年代まで英語で命名するのが当然だった日本のロックバンド。例外として「たま」や「筋肉少女帯」はいたが、当然じゃないセンスゆえ、扱われ方も当初はイロモノ的だった。真面目にロックするなら基本は英語、英語じゃなくてもカタカナ表記。それが以前の暗黙のルールである。

     
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