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石井恵梨子のチャート一刀両断!

"ちょいダサ"の魅力でトップへ いきものがかり・吉岡聖恵のピュアネスに感嘆

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石井恵梨子
風が吹いている
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 第一線の音楽ライター/評論家が、最新アルバム・シングルチャートを斬る!
 今回のレビュアーは石井恵梨子さんです。

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『I(通常版)』(エピックレコードジャパン)ジャケット画像

2013年07月22日~28日のCDアルバム週間ランキング

1位:I(いきものがかり)
2位:Hero(SUPER JUNIOR)
3位:キミの声(JUNHO(From 2PM))
4位:イン・ア・ワールド・ライク・ディス(バックストリート・ボーイズ)
5位:FEEL(安室奈美恵)
6位:吹き零れる程のI、哀、愛(クリープハイプ)
7位:中人(私立恵比寿中学)
8位:Inside of Me(U-KISS)
9位:天晴~オールタイム・ベスト~(さだまさし)
10位:TOWN AGE(相対性理論)

 バックストリート・ボーイズと安室奈美恵の名前が並ぶと、一瞬「90年代か?」と錯覚しそうになるが、ロック雑誌が激押しする新人クリープハイプ、サブカル人間の大好物である相対性理論、そして隙間を埋めるようにせっせと韓流アーティストたちの登場するところが2013年なう、の今週。

 前回「ジャケでアジカンと間違えないで!」と書いたさだまさしは、驚くことなかれ、初登場から一ヶ月以上ずっとトップ10圏内に居座り続けている。B'zやバンプやGACKT以上に強い、さだのベスト。もはや「さだ」と二文字を打つだけで「時流とか、流行とか、僕のファンには何も関係がないのですよ...」とにっこり笑う彼の悟り顔が浮かぶようになってきた次第。

 結局は固定ファンを持つアーティストが強い。そんな当たり前のことを痛感するが、だからこそ面白いのは初登場1位のいきもりがかりだ。14曲中5曲がタイアップ・ソングとしてすでにお茶の間に浸透。NHKロンドン五輪の主題歌「風が吹いている」などは、田舎のお婆ちゃんまでが「いきものがかりって名前は知らないけど、この曲は知ってるわぁ」と眼を細めるナンバーだろう。コアな固定ファンがいるというより、とにかく老若男女に好かれている。強烈なキャラや演出で一定層を惹きつけるのではなく、毎回のシングルで毎回まんべんなく受け入れられている。なんたる健全さ。カラクリ使ってCD売ってナンボの時代、この1位の意味は大きいはずだ。

 かといって、熱心な音楽ファンには響かないのだろう。いきものがかりはコアな音楽ファンが当然のようにスルーするタイプの音楽を積極的に鳴らし、そのことに強い自信を持っているバンドである。刺激や実験性よりも大衆性と普遍性を。赤裸々な私小説ではなく誰かの勇気になる応援歌を。本人もインタビューで認めているが、等身大というかちょいダサというか、まぁオーラのない恰好でテレビに出て、のびのびと唄っている吉岡聖恵がいる。

 その笑顔は「中学の合唱コンクールでソロパートを任された感じの子」を思い出させるものだ。たとえばMISIAやSuperflyの声量。椎名林檎のアクの強さ。安室奈美恵のセクシャリティ。それらが見事にゼロである吉岡は、自我や女性性に目覚める前の「歌が大好きで、音楽の先生にほめられて嬉しい!」みたいな無邪気さで歌っている。歌っているように見える。実際は30歳目前。うーん、すごい。このピュアネスは絶対に狙って出せるものじゃない。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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