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宇野維正のチャート一刀両断!

「女王」安室奈美恵の1位に納得しつつ、お手軽カバー盤の流行にガッカリ

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 第一線の音楽ライター/評論家が、最新アルバム・シングルチャートを斬る!
 今回のレビュアーは宇野維正さんです。

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安室奈美恵『FEEL(特典ポスター無)』(Dimension Point)ジャケット画像

2013年07月08日~14日のCDアルバム週間ランキング

1位:FEEL(安室奈美恵)
2位:BUMP OF CHICKEN Ⅰ [1999-2004](BUMP OF CHICKEN)
3位:BUMP OF CHICKEN Ⅱ [2005-2010](BUMP OF CHICKEN)
4位:なんだこれくしょん(きゃりーぱみゅぱみ)
5位:24/7(Def Tech)
6位:Summer Ballad Covers(May J.)
7位:天晴~オールタイム・ベスト~(さだまさし)
8位:Heart Song(クリス・ハート)
9位:BREAK MY SILENCE(高橋優)
10位:B'z The Best ⅩⅩⅤ 1999-2012(B'z)

 アルバムチャート1位は安室奈美恵『FEEL』。初週売上の約24万8000枚という数字は、今年に入ってから全ソロアーティストの中でトップ。グループを入れても、ベスト盤以外でこれよりも初週に売れたのはNMB48だけ。まさに女王の風格と言うしかないが、今回の作品で注目すべきなのは既発のシングル曲(ダウンロード除く)が"Big Boys Cry"たった1曲しか収録されていないこと。

 これまでもシングルよりアルバムの方が強い傾向が顕著だった安室奈美恵。タイアップでの露出を除いてシングルリリース時には歌番組を含めほとんどプロモーション活動をしない、主な活動は全国ツアー及びレコーディング、特定の雑誌(主に女性誌)でしか取材を受けないなど、以前から他の女性シンガーとは一線を画す活動方針を貫いてきた彼女だが、ここにきてCDリリースにおいてはアルバムアーティストとして完全に開き直ったと言える。

 そこから20万枚以上ドカーンと引き離されての2位&3位は、2週目となるBUMP OF CHICKENベストアルバム2種。累計でもそれぞれが20万枚強と、デビュー14年目にして初のベストアルバムとしては、かなり物足りない数字。「ベストアルバムは売れる」という常識もだんだん通用しなくなってきたということか。

 その一方で相変わらず手堅いのがカバーアルバム。今週6位のMay J.と8位のクリス・ハートは、いずれも先月リリースされたカバーアルバムだが、ここにきて再び順位が上昇。昨今のチャートでは珍しい、ロングセラーのゾーンへと入ってきた。

 テレビのカラオケ番組への出演がきっかけとなってデビュー、「世界一J-POPがうまい外国人」というツッコミどころ満載のキャッチコピーを持つクリス・ハートは、「カバーアルバム人気」「のど自慢/カラオケ文化」「歌の上手い黒人へのコンプレックス」という、日本土着の音楽的趣向の象徴とも言える存在。さらに言うなら、「こんなに歌の上手い黒人が、こんなに一生懸命に日本の歌を歌ってくれている」というところに、日本人としての自尊心がくすぐられる人もいるのだろう。「きっと聴いてるのは年配の人が多いんだろうな」とネットでリサーチしてみたら、意外にも10代20代からも広く支持されていることが判明。「若者の保守化はこんなところにも!」とまでは言わないけど、そりゃ、洋楽も売れなくなるはずだ。今頃、各レコード会社が2匹目のどじょうを狙って、新たな外国人カラオケ歌手を仕込んでるんだろうな......。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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